嫌い嫌いも好きのうち

君を見つけ出した時の感情が この五臓の六腑を動かしてんだ

渋谷すばるのマンピーは凄いぞ~カヴァーアルバム「歌」感想~

 渋谷すばるソロカヴァーアルバム「歌」を聞きました。

歌(初回限定盤)(DVD付)

歌(初回限定盤)(DVD付)

 
  1. スローバラード
  2. マンピーのG★SPOT
  3. ファンキー・モンキー・ベイビー
  4. First Love
  5. 元気を出して
  6. 君がいないから
  7. 言葉にできない
  8. SWEET MEMORIES
  9. オモイダマ (「歌」ver.) (通常盤のみ収録)

 

楽しい。このアルバムは楽しい。イヤホンで音量を思いっきり上げて聞いた時の、渋谷すばるの歌声に包まれる充足感といったらたまらない。全ての楽曲が一発録りで収録され、おそらく極力加工を避けたのだろう、ありのままの収録した日の空気がそのまま閉じ込められているため、臨場感がある。すぐ目の前で演奏されているような心地。さすが、「ライブ」にこだわる渋谷すばるがソロ名義で初めて出したアルバムだ。

 

一曲目のスローバラードから込められた熱量に震える。この曲は去年の音楽番組coversとソロライブで披露されており、私としては一番聞き覚えのある楽曲であるが、音源になるとここまで変わるのかと驚く。確かにどの時もこの曲を熱く熱く歌っていた彼ではあったが、私はこの音源が一番熱を持っていると感じた。ライブ音源よりもだ。それは1年を通して渋谷すばるが更に進化したことの象徴のようであり、そんな曲を1発目に持ってくるのだ。悪い予感などかけらもない。特に最後の火炎放射のようなシャウト。彼の特徴である強いビブラートをこれでもかと効かせたこれで私は一曲目から燃やしつくされたのだ。

 

そして記事タイトルにもしたマンピーのG★SPOT。所謂エロ曲、それも官能的な美しさを表現したわけでもなくただただマンピーと叫ぶ曲であり、ジャニーズアイドルがカヴァーしていいのかという声も出そうだが、渋谷すばるのマンピーは一味違うぜ。オフマイクからメンバーみんなテンションが上がりきってることが察される中で始まるイントロと「マンピー!」の掛け声。よく演歌のようだと言われる彼の声がエロ曲によくマッチする。少しのねちっこさとそれを脇から共に寄り添い押し上げるコーラス隊の声。このアルバムにおいてコーラス隊の役割は大きく、彼らの声で一気に天上まで押し上げられたテンションで、サビは拳を挙げずには、手を叩かずにはいられない。大サビ前の絞り出すような「Gスポット」の声は至高。

 

そんなマンピーで押し上げられたテンションのまま突入するファンキー・モンキー・ベイビー。マンピーで頂点まで達したと思ったテンションにはその上があって、その上のところでずっと踊り狂わされるような、そんな曲。ブルースハープの音色も力強く響いて楽しい。大サビ前の「君は」でのバンドメンバーとの掛け合いでいい雰囲気なことがわかる。実際初回盤に付属しているDVDにはレコーディング風景が収録されており、バンドメンバーと渋谷が信頼しあう関係を築き上げていることがわかる。昨年のソロライブから引き継がれているメンバーもいれば、新しく渋谷すばる BANDとなった方も。みんながみんな音楽に対し真っ直ぐで、その真っ直ぐな熱をそのまま込められたのがこのアルバムなのである。

 

4曲目にくるFirst Loveで雰囲気ががらっと変わる。たぶんこのアルバムでは意図的に前半と後半で雰囲気を変えているのであろう、この曲が境目である。今までテンションが上がるとずっと言い続けていたので、「そんなの求めていない」という人もいるだろう。そんな人もここから続く楽曲を聞いてほしい。まずこのFirst Loveの出だしのハスキーな声に彼の表現の幅を知ることになる。1年間、関ジャムでたくさんのアーティストとセッションを重ねたことにより得た曲に対する理解度と表現力。彼の歌声には表情が見える。「明日の今頃にはわたしはきっと泣いている あなたを想ってるんだろう」と歌う彼の声が優しくもあり切なくもあり。男性の高音が好きな私は、この曲での少し喉にかすみがかかったような、ろうそくのようなゆらめきの中に芯の通った力強さが隠れている高音がたまらない。

 

元気を出して。彼に応援されると、何にも負けないような気分になるのは何故だろうか。女性の話言葉がよく似合う彼の歌声が私を包みこんでくれる。フィンガースナップが刻むリズムは私を励ましてくれる。そう思えるぐらい感情に寄り添うような優しい曲。きっと私がこの先辛いことがあったらこの曲を思い出すんだろうなと思う。彼の歌声に慰めてもらうんだと思う。

 

またハスキーな声から始まる君がいないからは、切なさを含んだ声という点ではFirst Loveと同じであるが、この2つの曲で歌い方は変えられている。歌詞の内容的にも「会えない君を今も想っている」ということでこの2つは似たものがあるが、First Loveは女性目線、君がいないからは男性目線であると私は解釈している。君がいないからでは声は切ないものではあるが、地にしっかり足がついていると感じる。ゆらゆらと「新しい歌 うたえるまで」あなたを想うFirst Loveに対し、「愛だけしかない それしかないのに君がいないから」と言い切るこの曲をしっかりと表しているのだと思う。

 

私がこのアルバムで前から知っていた曲はスローバラードと言葉にできないだけであった。スローバラードも彼がカヴァーしていたから知ったので、これが初めて原曲を知っている状態で聞く彼のカヴァー。ここまで歌い手が違うと受け取るものも違うのかと驚いた。今までこの曲に対してはCMの影響もあって切ないイメージを抱いていたが、彼の言葉にできないは力強かった。一音一音はっきりと発するサビ部分は彼を波源として空気を震わせているようすが見えるかのようだ。あまりにも自分が持っていたイメージと違ったため本家を聞いてみたら、なるほど確かに本家も力強く芯を持った歌声だった。このアルバムは、原曲を綺麗にくみ取り、それをそのまま表現するのではなく自分もきちんと表現にのせられている。だからこのアルバムはカヴァーアルバムであり、紛れもなく渋谷すばるのソロ初アルバムなのだ。

 

このアルバムにおいてきっと中心にいるのはSWEET MEMORIESなのだろう。Mステでも披露されたこの曲は、一緒に共演した異国のアーティストの方の心も動かした。Aメロは控えめな分サビで爆発される感情の波。最後のサビに向かっていく熱量に何度目かの火傷を感じる。そんな熱を持った声で歌われるのは「失った夢だけが美しく見えるのは何故かしら」ということば。彼も、失った夢を美しく思っているのだろうか。彼の失った夢とはなんなのか。そんな事を考えてしまうぐらいに、この歌詞を歌う彼が揺らめく火のような儚さと力強さを持っていて。私はなぜか思い当たる思い出もないのに、最後のサビでこの歌詞を聞くと泣きそうになってしまう、それぐらい感情を揺さぶる声なのだ。

 

 

「嘘つくのは 上手じゃない」彼が、嘘偽りなく音楽への愛をこめて作られたアルバムが「歌」なのである。

去年のソロデビューの時とようすが全く変わって見えるのは、今回は味園ユニバースという映画を背負っていない、ポチ男でも茂雄でもなく「渋谷すばる」の音楽だからだろう。バンドメンバーと笑いながら音楽をする彼が楽しそうで、そんな彼が詰まったアルバムが発売される時にファンでいて本当によかったと思う。

たくさんの人に聞いてほしい。この曲が青春だった人たちに。この曲を歌っている人のファンの人たちに。カウコンのコンビ投票で1位に輝いた彼を見ていた人たちに。渋谷すばるはこんなにも音楽を愛す歌い手だということを知ってほしい。そんなことを思った。

 

公式サイトで視聴ができます。気になった方はぜひ。

www.infinity-r.jp